SHIO RA-MEN BOOM

ときどきラーメン特集をやります。
本誌を飛び出して増刊にすることもあります。

初めてのラーメン特集からもう10年近く経ちました。
あの頃はこってり系あっさり系などという漠然としたカテゴリーが中心でしたが、様々な角度から楽しめるものに進化してきましたね。ラーメン店さんに感謝です。

1980年代にブームになったのが『なんでんかんでん』などのとんこつ。その後は『大勝軒』のつけ麺、『蒙古タンメン中本』などを中心に激辛系など様々なブームがやってきました。近年では”淡麗系”や”煮干し”などもキーワードになっていますね。

さてそんな中、岩手で近年よく目にするようになったのが『塩ラーメン』です。
三陸を中心に岩手では細麺のあっさり醤油がラーメンの主流といってもいいなか、じわりじわりと『塩ラーメン』を提供するお店が増加中。日本で最初の塩ラーメンと言われている”函館ラーメン”が塩味の代表で、中華の”タンメン”が全国区といった感じのなか、人気店が”淡麗綺麗系の塩ラーメン”でその実力を競ってる感じがします。

盛岡市青山『らぁめんサンド』も独自の【比内地鶏とシャモロックの塩らぁめん】を提供し高いリピート率を誇っている。今回ご紹介していないが二戸『幸道』の鶏の塩、盛岡市月が丘『人力俥』の限定の塩、水沢『照清』の岡山・塩など県内全域で美味しい塩ラーメンが私たちを満たしてくれているのが今ではないでしょうか。

その塩ラーメンのほとんどが鶏ベース。これに煮干し、野菜、とんこつなど、独自のブレンドを加えて”オリジナルの味”を生み出しています。そしてそのスープを引き立てる”塩”がキモ。それも岩塩、海水塩、湖塩など多種多様。店主はその中から自分のスープにあった塩を組み合わせ、ベストマッチングを図っている様子。細麺・中太麺だけでなくなってるのも、近年の淡麗系の傾向。太縮れなどで勝負する店も増えています。

縮れ麺にも絡みつく塩加減が何ともいい感じ(RA-MEN IKKEN)
フライパンでひとつひとつ丁寧に野菜を炒め、自慢の自家製麺と合わせて老若男女が好む優しい味に(野菜たっぷりタンメンの店 大久保)
青森シャモロックと久慈産鶏肉を使用し、そこにのだ塩を合わせる(津軽煮干中華蕎麦 サムライブギー)

そういえば即席めんのトップは何といっても『サッポロ一番』。
その中でも『みそラーメン』と『塩らーめん』がダントツトップ2らしい。味噌ラーメンは全国どこにでも昔からあるし、そんなに失敗しない的な感じで、安心感抜群で人気なのはわかる。けれどなぜサッポロ一番において元祖の『しょうゆ味』でなく『塩らーめん』がそんなに売れるのか。

編集部内であれこれ話した結果、仮説”家庭じゃあまり塩ラーメンを作らないから”が導き出されました。どうでしょう。私は妙に納得しています。

塩ラーメンを自宅で、小さな頃から作って食べていたなんてなかなか聞きませんよね。だから即席麺で買う! あると思います。そして昨今の『塩ラーメン』人気もこんなところから来ているのではないでしょうか。味噌も醤油も慣れている。せっかく外で旨いラーメンを食べるならそれ以外の”塩”がいいかなあ。まだ飽きもせず慣れてもいない”塩”はしばらく続くのではないでしょうか。そのうち醤油はないけど塩はあります、なんて店も増えてきそうですね。

自家製麺がはまぐりの旨味を引き立てる看板メニュー(麺SAMURAI桃太郎)
余分なものは一切加えず、比内地鶏とシャモロックの旨味を引き出した一杯(らぁめん サンド)

塩ラーメン人気の後には何が来るんでしょうか。

編集部の勝手な予想は動物・獣系。淡麗綺麗系の次は芳醇無骨系。文字面だけ見ると美味しそうです。

ラーメン店、店主のみなさん、これからも私たちにひと時の幸時間をよろしくお願いします。

AREAivol.61(2020年4月1日発売)より。記事内の写真、データは発売時点のものです。

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