味と温度を科学してみた~ラーメン編~

温かくなる、とひと口に言っても、物理的に身体が温まるだったり、楽しいことが起きてテンションが上がってポカポカしたり。そんな中、ラーメンとコーヒーは身体も心も満たしてくれる身近なもの。だったらその味と温度を科学する価値ありますよね!? こじつけか(笑)。

らぁめんサンド全面協力

うま味にも三大〇〇が存在します。
グルタミン酸、イノシン酸、グアニル酸。グルタミン酸は昆布や醤油、味噌に含まれています。イノシン酸は肉や魚(煮干しなども)に含まれ、干しシイタケが代表的なのがグアニル酸。

まさにラーメンはこれらうま味三大成分が揃う食べ物。うま味成分は多く混ざり合うことで、その美味しさを増すんだそうな。ただしうま味成分を引き出す温度や時間はそれぞれ違うのが難しいところ。

鶏ダシ、煮干し、豚骨などのベースに、昆布や干しシイタケをブレンドして、多くのラーメンスープが作られている。それが俗にいう【仕込み】です。

さて、今回は『らぁめん サンド』に全面協力してもらいました
温度計持っていってきまーす。

このラーメンの美味しさに温度で迫る。『らぁめん サンド』の人気メニュー【鶏そば】。

実は筆者、人気のラーメン店さんの営業時間が短いことに不満を抱いていました。しかし今回の取材で「すみませんでした…」と心の中で謝罪しました

ひとつのスープを作るためのうま味たっぷりのダシをとるだけで7時間近くかかるのです。並行してチャーシューを作り、タレやその他の具材も整える。

1日3時間半くらいの営業時間のために、その倍以上の時間を仕込みにかけるのです

2hかけてゆっくり80℃に。さらに1hかけて92~94℃に。また80℃に落してひき肉を加え(そうすると70℃くらいにいったん下がる)80℃をキープして3h。
サンドでは基本煮干し系スープ以外は90~92℃を上限に。
スープを合わせる。28℃→75℃へ。サンドの場合は1杯1杯スープを小鍋に移し、注文後に温める。

煮干しだけは温度を96℃まで上げ、熱さで煮干しの風味を演出。
スープによって温度も異なるし、器も違うので神経を使うという。

サンドはオリジナルの自家製麺を99℃で90秒茹でる。平ザルで素早く湯切り。湯切り直後の麺は88℃でした。
メニューによっては最後に鶏油をまわす。これが蓋となり、食べ進むときの温度低下が若干ゆっくりに。
器、スープ温度、具材、鶏油などを融合させ62~68℃を目指して作るそう。季節や気温にも左右されるだけに気が抜けない。
今回は編集部Yのゆっくりペースで食べ進む過程の温度も計測。最終段階で50℃くらい。できれば55℃くらいで食べ終わるのが理想。

ここまで『サンド』の阿部さんには一発勝負ですべて計測させてもらいました。雑誌用に何度もやって温度調節して欲しくはなかったので。「緊張しますね」と言いつつ快諾してもらい企画が成立しました。ありがとうございます。

「煮干しですが…実は器を温める温度を間違えて、3℃は完成温度が低いです…」と阿部氏。確かに最も温度が高いスープなのに、計測ではそれほどでも(笑)。

完成時が62~68℃で、食べ終わりが55℃程度。これが今私が思う理想ですかね。まだまだ試行錯誤の段階なので、これも変わるかも知れません。完成時温度も気になりますが、低温調理のチャーシューの温度と時間、スープに入れるお水、器のチョイス、麺の茹で時間など何もかもが不安で、毎日胃が痛い思いなんです(笑)」とのこと。

ラーメン店に行ったら、温度も意識して食べてみてくれい。

AREAivol.66(2021年1月1日発売)より。記事内の写真、データは発売時点のものです。

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